◆連体詞
この ・ その ・ あの ・ どの
たった ・ とんだ ・ たいした
あらゆる ・ いわゆる ・ いかなる ・ ある ・ 単なる ・ さる ・ きたる
今回は活用のない自立語編です。
◆名詞とは
① 自立語で、活用がない。
② 人や物事の名前を表す。
③ 文の成分の主語になることができる。
④ 体言ともいう。
◆名詞の種類
① 普通名詞
同じ性質を持つものならどれでも通用するもの。
【例】花・鳥・人・家・りんご・喜び・歩き
② 固有名詞
特定のものの名を表すもの。国名・地名・人名など。
【例】日本・東京都・夏目漱石・富士山
※同種の他のものと区別するために世界で一つしかないものにつけた名。
同姓同名は、たまたま同じ名が複数あっただけ。本来、その他大勢の人物と区別するために世界で一つだけのものにつけられている。
太陽や月は世界に一つしかないが、区別が不要なので固有名詞ではない。
③ 数詞
数量や順序を表すもの。数字が入っている。「何」も同種なので注意。
【例】三メートル・五台・20時・1番・何人
④ 形式名詞
もとの意味がうすれて抽象的な意味を持つようになったもの。ふつうは修飾語をともなう。
【例】こと・もの・ため・とき・まま・ところ
※形式名詞はふつうはひらがな書きにする。
⑤ 代名詞
直接名を言わないで指していうもの。
【例】私・彼・これ・あれ・どれ・そこ
※代名詞は、人を指す人称代名詞(「彼・彼女」など)と事物を指す指示代名詞(「これ・それ」など)にわかれる。
※連体詞と間違えやすいので注意。「この・その・あの・どの」は連体詞。
⑥その他
・転成名詞
動詞や形容詞などの他の品詞が名詞に転じたものを転成名詞という。
・動詞の連用形
【例】ひかる → ひかり
・形容詞・形容動詞の語幹に接尾語「さ・み・け・げ」がついたもの
【例】かわいい(形容詞)→ かわいげ
静かだ(形容動詞 → 静かさ
宋に狙公なる者あり。狙を愛し、之を養ひて群れをなす。能く狙の意を解し、狙も亦公の心を得たり。其の家口を損じ、狙の欲に充つ。俄かにして匱し。将に其の食を限らんとす。衆狙の己に馴れざらんことを恐るるや、先ず之を誑きて曰はく、「若に芧を与ふるに、朝に三にして暮れに四にせば、足るか。」と。衆狙皆起ちて怒る。俄かにして曰はく、「若に芧を与ふるに、朝に四にして暮れに三にせば、足るか。」と。衆狙皆伏して喜ぶ。
物の能鄙を以って相籠すること、皆猶ほ此くのごときなり。聖人の知を以って群愚を籠するは、亦猶ほ狙公の知を以って衆狙を籠するがごときなり。名実虧けずして、其れをして喜怒せしむるかな。
【訳】
宋の国に猿飼いとよばれる者がいた。猿をかわいがって飼い育てていて、猿は群れを成していた。彼は猿が何を考えているか理解することができ、猿もまた、主人の心をつかんでいた。彼は自分の家族の食べ物を減らしてまでも、猿の食欲を満足させていた。(ところが)彼は突然貧乏になってしまった。そこで猿の食料を制限しようとした。(けれども)多くの猿が自分に慣れ親しまなくなることを心配したので、まず猿をだまして次のように言った、「お前たちに木の実を与えるのに、朝には三つ、夕方には四つずつにしたら、どうだ足りるか。」と。多くの猿は皆、立ち上がって怒った。そこですぐに「お前たちに木の実を与えるのに、朝には四つ、夕方には三つずつにしたら、足りるか。」と言った。(すると)多くの猿は皆、ひれ伏して喜んだ。
物事において賢者と愚者がお互いに言いくるめ合っていることは、すべてこのようなものである。聖人が自分の知識を用いて愚かな人々を言いくるめているのは、あたかも狙公が知恵でもってたくさんの猿をだましたようなものである。(聖人も一皮むけばこんなものだ)。名目と実質は大差ないのに、猿たちを喜ばせたり怒らせたりしているのではないか。
②「能解狙之意」の「能」の用法と意味。
【答】「能」は「能く~す」と読み、可能の意味。文意は「狙公は猿たちの気持ちを理解することができる」という意味。
③「将限其食」の「将」の用法と意味。
【答】「将に~んとす」と読む再読文字で、「今にも~しようとする」という意味。
文意は「サルたちの食料を制限しようとした。」の意味。
④「恐衆狙之不馴於己也」の「於」の用法と意味。
【答】「於」は対象を表す置き字。訓読では読まない。文意は「多くの猿が己(狙公)に対してなつかなくなることを心配して」という意味。
⑤「能鄙」とはどういう意味か。
【答】「賢者と愚者」のこと。ここでは、狙公が賢者で猿たちが愚者。猿たちが、狙公に言葉巧みにだまされることと賢者に愚者がだまされることが同じだといっている。
⑥「亦猶狙公之以智籠衆狙也」の「猶」の用法と意味。
【答】「猶」は「猶ほ~がごとし」と読む再読文字。文意は「あたかも(まるで)~のようだ」という意味。聖人が自分の知恵を用いて愚かな人々をだますことが、狙公が猿たちをだますのとちょうど同じようなものだという意味。
⑦「名実不虧,使其喜怒哉」の「使」「哉」の用法と意味。
【答】「使」は使役。「使AB」で、「AをしてBせしむ」と読み、「AにBさせる」と訳す。
文意は「名目と実質が違いがないのに、狙公が猿たちを喜ばせたり、怒らせたりしている」という意味。
「哉」は詠嘆。「かな」と読む。日本語の助詞なので、書き下し文ではひらがなにする。
虎百獣を求めて之を食らひ、狐を得たり。狐曰はく、「子敢へて我を食らふこと無かれ。天帝我をして百獣に長たらしむ。今子我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふなり。子我を以って信ならずと為さば、吾子の為に先行せん。子我が後に随ひて観よ。百獣の我を見て、敢へて走げざらんや。」と。虎以って然りと為す。故に遂に之と行く。獣之を見て皆走ぐ。虎獣の己を畏れて走ぐるを知らざるなり。以って狐を畏ると為すなり。
【訳】
虎がけだものというけだものを探し求めては食べ、(あるとき)狐をつかまえた。狐が言うには、「あなたはけっして私を食べてはいけません。天の神が私をすべてのけだものの王にならせたのです。もしあなたがこの私を食べるならば、それは天の神の命令に背くことになってしまいます。あなたが私の言うことを信用しないならば、私はあなたの疑いを晴らすためにあなたの前に立って歩いてみましょう。あなたは私のあとからついてきてごらんなさい。けだものたちはすべて私の姿を見て、必ず逃げ出すでしょう。」と。虎は狐の言うことをもっともなことだと思った。そこで狐とともに出かけた。けだものはこれを見てみな逃げ出した。虎は自分を畏れてけだものたちが逃げるのだということがわからなかった。虎は、狐を畏れてけだものが逃げるのだと思った。
【ポイント】
①故事成語としての「虎の威を借る狐」の意味とこの文章の内容について。
【答】他人の権勢かさに着て威張るつまらない人間のたとえ。
②「無敢食我也」の「無かれ」と「無敢~」の意味。
【答】「無かれ」は禁止の意で「~してはいけない」。
「敢へて」は「進んで~する」の意で、「無敢~」は「進んで(決して)~してはいけない」の意味。よって「無敢食我也」は、「私を進んで食べるようなことはしてはいけません」「決して私を食べてはいけません」の意味。
※「否定語+敢」を「決して~しない」と訳すのには異論がある。伝統的には「決して~ない」と訳すし、教育現場でもいくつかの漢和辞典でもそうしている。
しかし、語学的に見て「敢」は「自ら進んでするさま」を表し、否定語がつくと、「進んで~する」ことを否定することになり、「自ら進んでは~しない・~する勇気がない・しかたなく~する」という意味になる。江連隆『漢文句法ハンドブック』『全訳漢字海』『新字源』などでは、「決して~ない」はとっていない。
③「天帝使我長百獣」の「使」の用法と意味。
【答】「使」は使役。「使AB」で、「AをしてBせしむ」と読み、「AにBさせる」と訳す。ここは、「天帝が私を百獣の王にさせた」という意味。
④「以我為不信」の「以為」の用法と意味。
【答】「以為」は「以A為B」で、「Aを以てBと為す」と読んで、「AをBと思う」という意味。ここは、「私を信用ならないと思う」の意味。
⑤「敢不走」の用法と意味。
【答】「敢えて走げざらんや」と読み、反語の用法。「どうして逃げないことがあろうか、いやきっと逃げる」という意味。
⑥「獣見之皆走」の意味。
【答】「けものたちは、狐の後ろに従う虎の姿を見てみな逃げた」の意味。けものたちは、狐を恐れたのではなく虎を恐れて逃げたが、虎はそのことに気づかず、狐を恐れたものと思った。
これが「虎の威を借る狐」という故事成語の由来。
定期テストの勉強では、まず、訳を何度も読んで大意を覚えましょう。
つぎに、【ポイント】にあるような、返り点が難しい文や重要語句・重要句法を覚えましょう。
【書き下し文】
賈島挙に赴きて京に至り、驢に騎りて詩を賦し、「僧は推す月下の門」の句を得たり。推を改めて敲と作さんと欲す。手を引きて推敲の勢ひを作すも、未だ決せず。覚えずして大尹韓愈に衝る。乃ち具さに言ふ。愈曰はく、「敲」の字佳し。」と。遂に轡を並べて之を論ずること久しくす。
【訳】
賈島は科挙の試験を受けるために都にやってきて、驢馬に乗りながら詩を作り、「僧は推す、月下の門」という句を作った。しかし、推を改めて敲にしようかと思い、手をさしのべて推したり敲いたりという動作をしてみたが、まだどちらとも決まらなかった。その時うっかり長官の韓愈の行列に突き当たってしまった。そこで、賈島は事情を詳しく説明した。韓愈は、「敲の字のほうがよい。」と言った。二人はそのまま馬を並べて、長い間詩を論じあった。
【ポイント】
①故事成語としての「推敲」の意味と文章内容との関係。
【答】推敲「詩文を作るのに字句をさまざまに考え練ること」。
文章では賈島が門を「推す」にするか「敲く」にするか悩んでいる。
② 「欲改推作敲」の「欲」「作」の読みと意味。
【答】「推を改め敲と作さんと欲す」。
欲は「ほっす」と読み、「~しようとする・~したい」の意。
作は「なす」と読み、「~にする」の意。
③ 「引手作推敲之勢」の意味。
【答】「手を伸ばして門を推したり敲いたりする動作をしてみること」。
門を「推す」にするか「敲く」にするか迷い詩の内容をじっさいにおこなっている様子。
④ 「未決」の「未」の用法と意味。
【答】再読文字で、はじめは返り点を無視して副詞的に読み、二度目に返り点にしたがって「ず」と否定の助動詞として読む。意味は「まだ~しない」
⑤ 「不覚衝大尹韓愈」の「不」の用法と意味。
【答】「不」は否定の助動詞で「~しない」の意味。
書き下し文ではひらがなで書く。
ここでの「不覚」の意味は「気づかずにうっかり~してしまう」。詩のことを考えていて、韓愈の行列がいるのに気づかずうっかりぶつかってしまったのである。
⑥ 「乃具言」の「乃」「具」の読みと意味。
【答】乃「すなわ(ち)」と読み、「そこで」の意味。
具「つぶさ(に)」と読み、「詳しく」の意味。
⑦「遂並轡論詩」の意味と「遂」の読み。
【答】「賈島と韓愈は意気投合して、乗っていた馬の首を並べて(「轡」は、馬に手綱をつける道具)二人で詩を論じ合った。」
「遂」は「つい(に)」と読み、「こうして・そのまま」などの意。
◆ 記事一覧 ◆ 以下のリンクから各記事にとべます。 【漢字編】 ・ 漢字の効果的な覚え方 ・ まぎらわしい漢字の見分け方 ・ 同訓異字漢字の見分け方 ・ 注意すべき同訓異字の漢字 BEST 5その1 ・ 注意すべき同訓異字の漢字 BEST 5その2 ...