定期テスト対策の漢文勉強法
虎の威を借る狐
【書き下し文】
虎百獣を求めて之を食らひ、狐を得たり。狐曰はく、「子敢へて我を食らふこと無かれ。天帝我をして百獣に長たらしむ。今子我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふなり。子我を以って信ならずと為さば、吾子の為に先行せん。子我が後に随ひて観よ。百獣の我を見て、敢へて走げざらんや。」と。虎以って然りと為す。故に遂に之と行く。獣之を見て皆走ぐ。虎獣の己を畏れて走ぐるを知らざるなり。以って狐を畏ると為すなり。
【訳】
虎がけだものというけだものを探し求めては食べ、(あるとき)狐をつかまえた。狐が言うには、「あなたはけっして私を食べてはいけません。天の神が私をすべてのけだものの王にならせたのです。もしあなたがこの私を食べるならば、それは天の神の命令に背くことになってしまいます。あなたが私の言うことを信用しないならば、私はあなたの疑いを晴らすためにあなたの前に立って歩いてみましょう。あなたは私のあとからついてきてごらんなさい。けだものたちはすべて私の姿を見て、必ず逃げ出すでしょう。」と。虎は狐の言うことをもっともなことだと思った。そこで狐とともに出かけた。けだものはこれを見てみな逃げ出した。虎は自分を畏れてけだものたちが逃げるのだということがわからなかった。虎は、狐を畏れてけだものが逃げるのだと思った。
【ポイント】
①故事成語としての「虎の威を借る狐」の意味とこの文章の内容について。
【答】他人の権勢かさに着て威張るつまらない人間のたとえ。
②「無敢食我也」の「無かれ」と「無敢~」の意味。
【答】「無かれ」は禁止の意で「~してはいけない」。
「敢へて」は「進んで~する」の意で、「無敢~」は「進んで(決して)~してはいけない」の意味。よって「無敢食我也」は、「私を進んで食べるようなことはしてはいけません」「決して私を食べてはいけません」の意味。
※「否定語+敢」を「決して~しない」と訳すのには異論がある。伝統的には「決して~ない」と訳すし、教育現場でもいくつかの漢和辞典でもそうしている。
しかし、語学的に見て「敢」は「自ら進んでするさま」を表し、否定語がつくと、「進んで~する」ことを否定することになり、「自ら進んでは~しない・~する勇気がない・しかたなく~する」という意味になる。江連隆『漢文句法ハンドブック』『全訳漢字海』『新字源』などでは、「決して~ない」はとっていない。
③「天帝使我長百獣」の「使」の用法と意味。
【答】「使」は使役。「使AB」で、「AをしてBせしむ」と読み、「AにBさせる」と訳す。ここは、「天帝が私を百獣の王にさせた」という意味。
④「以我為不信」の「以為」の用法と意味。
【答】「以為」は「以A為B」で、「Aを以てBと為す」と読んで、「AをBと思う」という意味。ここは、「私を信用ならないと思う」の意味。
⑤「敢不走」の用法と意味。
【答】「敢えて走げざらんや」と読み、反語の用法。「どうして逃げないことがあろうか、いやきっと逃げる」という意味。
⑥「獣見之皆走」の意味。
【答】「けものたちは、狐の後ろに従う虎の姿を見てみな逃げた」の意味。けものたちは、狐を恐れたのではなく虎を恐れて逃げたが、虎はそのことに気づかず、狐を恐れたものと思った。
これが「虎の威を借る狐」という故事成語の由来。
定期テストの勉強では、まず、訳を何度も読んで大意を覚えましょう。
つぎに、【ポイント】にあるような、返り点が難しい文や重要語句・重要句法を覚えましょう。
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