◆短歌とは
五七五七七の五句三十一音からなる定型詩です。
それぞれの句を、初句(五)・二句(七)・三句(五)・四句(七)・結句(七)といいます。
五七五を上の句、七七を下の句といいます。
定型からはずれたものを破調といいます。
五七五七七より音数が多いと字余り、少ないと字足らずといいます。
[例] 清水へ 祇園をよぎる 桜月夜 こよひ逢う人 みなうつくしき
作者は与謝野晶子です。この歌は、第三句の「桜月夜(さくらづきよ)」が六音で字余りになっています。
◆短歌の句切れ
意味や調子の上で切れるところを句切れといいます。
初めの五で切れると「初句切れ」、次の七で切れると「二句切れ」、以下「三句切れ」「四句切れ」となり、最後の結句で切れるものを「句切れなし」といいます。
俳句の句切れは、切れ字の「や・かな・けり」が目印になったのですが、短歌は句切れの目印はあまりありません。
強いていうと、「活用語の終止形」が目印です。つまり、「。」が入るところが句切れ。
句切れのいちおうの目安として
『かな・けり・なり・り・終止形・「〜い・〜しい」で言い換えられる「〜し」の形』
と覚えてもらっています。
「~し」は、文語の形容詞の終止形です。たとえば、「高し」「美し」などです。
「高し」は「高い」、「美し」は「美しい」と言い換えられるので、形容詞の終止形だと見分けられます。
[例] うすべにに 葉はいちはやく 萌えいでて 咲かんとすなり 山桜花
若山牧水の歌です。第四句の「咲かんとすなり」の「なり」が句切れの目印で四句切れです。
ちなみに「なり」は助動詞の終止形です。
[例] 海恋し 潮の遠鳴り かぞへては 少女となりし 父母の家
与謝野晶子の歌です。初句切れの歌。「~しい」で言い換えられる「~し」が句切れの目印で、初句の「恋し」がそれにあたります。
「恋し」の「し」を「しい」で言い換えると「恋しい」となり、形容詞の終止形だとわかります。「少女となりし」の「なりし」も「~し」の形ですが、「なりい」「なりしい」と言い換えられないので、形容詞の終止形ではないとわかるのです。
◆短歌の調子
句切れの場所により短歌の調子が決まります。
・初句切れ・三句切れの歌を「七五調」といいます。
五/七五/七七
初句と三句で切れると、七五がつながりますよね。
ですから、七五調となるわけです。
・二句切れ・四句切れの歌を「五七調」といいます。
五七/五七/七
二句と四句で切れると、五七がつながります。
ですから、五七調となります。
◆枕詞
短歌には特定のことばにかかる五音の「枕詞(まくらことば)」というものがあります。
たとえば、「たらちねの」は母にかかる枕詞。「あをによし」は奈良にかかる枕詞です。
これは、具体的な意味を持たないので気をつけましょう。
[例] たらちねの 母がつりたる 青蚊帳を すがしといねつ たるみたれども
長塚節の歌です。初句に「たらちねの」という「母」にかかる枕詞があります。つぎに「母」が来ていますね。「たらちねの」自体に意味はなく、母を導くはたらきをしています。
◆短歌の解釈問題
入試などで出題される短歌の解釈は、ある程度客観性がなければ解答を導き出せません。
ですから、選択肢の内容と短歌とを照らし合わせて、照合する部分を見つけ出すというのが読解のポイントです。
【例題】
つぎの短歌の説明としてふさわしいものを後から選びなさい。
① いつしかに春の名残となりにけり昆布干場のたんぽぽの花 北原白秋
② ゆかのうへ水こえたれば夜もすがら屋根の裏べにこおろぎの鳴く 伊藤左千夫
③ うすべにに葉はいちはやく萌えいでて咲かんとすなり山桜花 若山牧水
ア 聴覚にうったえる歌で、作者は台風の去った夜にしみじみとした気分にひたっている
イ 春の終わりを歌ったもので、春を象徴するものを感慨深く見つめている
ウ 体言止めが効果的に使われ、細やかな観察により花の色彩と生命がとらえられている
【解答】
①イ ②ア ③ウ
①は、「春の名残」の部分が、イの「春の終わり」と対応します。
②は、「こおろぎの鳴く」が、アの「聴覚にうったえる」に対応します。
③は、「うすべに」が、 ウの「花の色彩」に対応します。
◆短歌のまとめ
1.五七五七七の五句三十一音の定型詩
2.句切れは基本的に終止形のところ
3.初句三句で切れると「七五調」、二句四句で切れると「五七調」
4.特定のことばにかかる枕詞に注意
5.鑑賞文は客観的な根拠を探す
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