2021年5月10日月曜日

接続の関係の見分け方と注意点



◆接続の関係とは

前後の文をつないで関係を表したり、原因・理由や条件を表したりする文節を接続語といいます。

接続語には次の二種類があります。


1. 文と文や語と語をつなぎ関係を表す文節

「しかし・そして・だから・つまり」などの接続詞がこれにあたります。例文で示しましょう。


. 全力で走った。しかし、バスに乗りおくれた。

. 雨が降った。だから、運動会は中止となった。

 

アの文では、「しかし」が、逆接を表す接続語です。前後の文を逆の関係でつないでいます。

イの文では、「だから」が、順接(原因・理由)を表す接続語です。前の文が原因・理由、後ろの文が結果という因果関係を表しています。

どちらも、接続詞という品詞です。

 


2. 原因・理由や条件などを表す文節

こちらは、一つの文節に接続助詞がついて接続語をつくっているのが特徴です。


. 私は勉強したので、試験に合格できた。

. 彼が勇者ならば、この剣を抜けるだろう。

 

アの文では、「勉強したので」が、後の文の原因・理由を表す接続語です。

イの文では、「勇者ならば」が、後の文が成り立つための条件を表す接続語です。

アでは原因・理由を表す接続助詞の「ので」が、イでは仮定条件を表す接続助詞「ば」がついています。

 



◆接続語の見分け方と注意点

文と文、語と語をつなぐ接続詞は比較的見分けやすいと思います。

問題は、接続助詞がついて原因・理由や条件を表すほうでしょう。

こちらは、修飾語と見分けにくいという質問をよく受けます。


これは次のような見分け方が有効です。

◆接続語の見分け方

1. 原因・理由や条件を表していて、接続助詞がついている

2. 接続助詞をとって二つの文に分け、接続詞でつなげる

 

たとえば、「私は勉強したので、試験に合格できた。」という文では、「私は勉強した」という文と「試験に合格できた」という二つの文に分けられます。

さらに、「私は勉強した。だから、試験に合格できた。」と、二つの文を接続詞「だから」でつなぐことができます。

こういう構成になっているものは、まず接続語です。


それに対して、「私はすぐに、試験に合格できた。」という文では、まず、接続助詞がありません。

それに、「私はすぐだ」と「試験に合格できた」という二つの文にわけ、同じような意味になる接続詞でつなぐことはできません。

 

接続詞以外の接続語は、上記の考え方と典型的な例を覚えておくこととで見分けるようにしましょう。




◆まとめ

・接続語には、⑴接続詞と⑵接続助詞のつく文節との二種類がある

 

・⑵は、①原因・理由や条件を表している、②接続助詞を接続詞にかえて二つの文にできるという見分け方が有効


 

 

以下、すこし込み入った説明をします。興味のある方はお読みください。


じつは、接続語というものは比較的新しく登場してきた分類で、昔は接続語というものはなく、接続詞を独立語に、原因・理由や条件を表す文節を連用修飾語に分類していたこともあるのです。

連用修飾語の内容は、いろいろなものが未整理状態できちんとした分類ができていませんでした。


たとえば、「彼は 本を ゆっくり 読んだ」という文の「本を」と「ゆっくり」という文節は、学校文法では、両方とも同じ連用修飾語だとされます。

しかし、「彼は本を読んだ」といっても、特に不自然さはありませんが、「彼はゆっくり読んだ」というと、「何を読んだのか?」と情報の不足が気になるはずです。

つまり、「本を」は目的格を表し、「読んだ」という文節に強い関係を持つのに対して、「ゆっくり」は状態を補足的に説明しているという点で、区別すべきものなのです。


同じように、接続語も未整理なものが多いのです。

たとえば、「値段が高いので、買えない。」という文の「高いので」は「ので」という接続助詞がつき原因・理由を表す接続語です。

ところが、「値段が高く、買えない。」は、接続助詞がついていないけれども、意味としては原因・理由を表しています。ですから、意味上は接続語でしょう。


では、「値段が高くならない」はどうでしょうか。「高く」は原因・理由を表すのではなく、「ならない」を修飾しています。同じ形なのに文法上の機能は違っています。

さらに、「値段が高く、品質が良い」はどうでしょう。「主語+述語、主語+述語」という重文で、節が並立の関係になっています。


これを中学生に教えるのはなかなか難しいと思います。


専門分野では、研究の進展によって整理が細分化されてきましたが、学校教育にはまだ十分生かされていません。


ですから、試験や問題集の問題も、典型的な例文しか出さないようになっているはずです。


先生方におかれましては、ぜひまぎらわしいものは試験に出題なさらないようにお願いしたいと思います。

 


参考文献

北原保雄『日本語の世界6 日本語の文法』中央公論社

松村明編『日本文法大辞典』明治書院




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